食べない・死なない・争わない元判事・稲葉耶季先生が明かす――「争わない生き方」

発売中の『ゆほびか』8月号(6月16日発売号)では、
「争わない生き方こそ幸福への近道」を特集しています。
記事の中から、稲葉耶季(いなばやすえ)先生のお話を下記にご紹介します。

まずは、編集部御厨から、内容紹介を。。。

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こんにちは!『ゆほびか』編集部の御厨です。


さて、最新号の『ゆほびか』8月号(6月16日発売号)では、「争わない生き方こそ幸福への近道」をご紹介しています。
私たちの日常の中では、些細なことで争いが生じます。
相手の言動が自分の思いや期待と違ったとき、不満や怒りを感じて、ついケンカになってしまう……。
こんな悩みに、「争わないコツ」を元判事の稲葉耶季(いなばやすえ)先生にお聞きしました。

『食べない、死なない、争わない』(マキノ出版)を上梓された稲葉先生は、判事として司法の世界で仕事をされた後、大学教授として教鞭をとられたかたです。
大学を退官された後、臨済宗の僧籍を取得。
また、不食を続けたり、ヒマラヤに学校を設立する運動に尽力されたりしたことでも知られています。

判事という、人と人との争いのど真ん中でお仕事をされてきた稲葉先生は、「嫌なことや腹が立つような事態も、あなたに何かを気づかせるために起こっていると捉えてみること」とおっしゃいます。「心地よさだけを感じていては、その尊さに気づけないかもしれません。つらい目にあって、初めてわかることもあるのです」(稲葉先生)

そうは言っても、やっぱり腹が立つというときの解決法として、先生が実践されているやり方を教えていただきました。「まずは、黙って、思考を遠ざけ、『はっ、はっ、はっ』と、意識的に強く息を吐くようにしています」(稲葉先生)

そして、この取材を通して、私が最も腑に落ちたのは、「あなたは私、私はあなた」――つまり、すべてはつながっていて1つであるということ、の意味でした。ワンネスという言葉でも表現される世界ですが、この概念を、今まで私が聞いたどんな説明より最もわかりやすく解説してくださったのが稲葉先生です。

以下に一部をご紹介します。(御厨)

☆☆☆稲葉耶季先生のお話☆☆☆

あなたは私、私はあなた

 人は、なぜ争うのでしょうか?
 争いの生じるところには必ず、当事者にとって認めることのできない「違い」があります。利害の違い、価値観の違い、思想や宗教の違い、国の違い、人種の違い、などなど。

 身近なことで言えば、相手の言動が自分の思いや期待と違って、不満や怒りを感じると、争いの火種になります。子どもが遊んだ後、自分で後片づけしてほしいのに、してくれない。家事や子育てでしんどい気持ちを聞いてほしいのに、夫が聞いてくれない。そんなことから、ケンカになってしまう……。皆さんも日常的に体験されていることでしょう。

 争いは、「私」と「あなた」の間にある「違い」を認められないときに起こります。けれど、実は「私」と「あなた」との間に確固たる境界などないのです。

 どこからがあなた? どこからが私? その区別は、私たちが勝手にそう認識しているだけで、ほんとうは存在しません。「あなたは私、私はあなた」なのです。まず、そのことからお伝えしたいと思います。

 ここに、オレンジの実が1つあるとします。私たちはそれを見れば、「あ、オレンジがある」と思うでしょう。けれど、「これがオレンジである」という独立した存在など、ほんとうはないのです。

 オレンジが何でできているかといえば、成分の9割くらいは水分。では、その水はどこから来たか? 木になっているとき、地面から吸い上げられた水です。土の中にあった水はどこから? 雨が降ったからでしょう。なぜ空に水があるのか? 海や川から空気中に蒸発した水分が雨雲となり、雨を降らせました。海や川の水は、元をたどれば山の上に降った雨かもしれないし、もしかすると、かつて私やあなたの体の中にあった水分かもしれません。ありとあらゆるところから来た水がオレンジの中に入っているのです。

 オレンジには、ビタミンやミネラルなどのさまざまな栄養素も入っています。それらはどこから来たのか? オレンジの木が育って実をつけるには、地面の土、落ち葉の養分、バクテリア、雨、種を運ぶ鳥や虫……などなど、たくさんのものの力が必要でした。もちろん、太陽も。1億5千万kmもの彼方から地球に届く太陽の光がなければ、オレンジは存在しなかった。

 この宇宙にある、ありとあらゆるものが形を変えて、オレンジの中に入っているのです。私たちは「これがオレンジ」と思っていますが、オレンジはオレンジ以外のものからできているのです。

海の波同士が争うのは意味がない

 人間も同じです。私は私以外のものでできています。あなたはあなた以外のものでできています。

 たくさんの植物や動物を食べ、さまざまな成分を得て、たくさんの人や物からエネルギーを得て、あなたはできています。遠い祖先から、あなたの祖父母、両親から受け継がれたものと、周囲の人や遠くにいるいろいろな人の影響とで、あなたはできているのです。

 すべての命あるものは、ほかの命、ほかのものに依存して生きている。すべてがつながり、循環しているのです。万物が絶えず離合集散して入れ替わりながら、この宇宙を成している。そのことを仏教では「空」と言います。

(稲葉耶季先生談。以上、ゆほびか8月号の記事の一部を引用)

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